教会写真館 PART 1
Last Updated 22 APR. 2012 ver.2.02 文・撮影：八木谷涼子
■リンク集に戻る ■教会写真館 PART 2（洗礼盤）へ
■ カトリックの告解室／告解用ついたて
カトリックの告解室（告白場）といえば、ヨーロッパ映画に出てくるような、電話ボックスの形状を連想する方が多いのではないかと思う。下の写真でいえば、［1］のようなタイプである。わたしもそんなふうに思っていたので、同じ明治村で［3］のタイプを見たときは仰天した。つつぬけである。この設備を前にして、「告解をする者が誰なのか、告解を聞く神父にはわからない」などという説明をすることは、きわめて難しい。だが、これはあくまで過去の設備だろう、と考えてとりあえず納得した。だから、2002年に実際に長崎で［4］や［5］の、きっすいの「ついたて」タイプを見たときは驚いた。［4］の黒崎教会のものは目立たぬ二階席においてあったので、もう使用されていないのかもしれないが、［5］のものは、明らかに現役で稼働中と見た（隣の椅子の上に、ゆるしの秘跡用のストラがかけてある）。信徒の顔がわかるどころか、もし告解中に誰かが教会堂に入ってきたら、全部つつぬけではあるまいか。それを防ぐには、一人の話を聞くたびごとに、教会堂の扉に鍵をかけるか、外に番人をおくしかない。
また、［2］のようにカーテンを用いたもの（洋服売り場の試着室を連想する）も長崎にはよくあるようだ。頭ヶ島教会（別冊太陽 p.6 参照）のものは、外から見るとまさに試着室にしか見えない。電話ボックスのように四方をきっちりつくると暑苦しい、という南国ならではの実際的な事情があるのかもしれない。そういえば、フィリピンの告解室はどんなつくりなのだろうか？
以上を書いたあとで、あるカトリック信徒さんからこんな話を聞いた。もっとも“オープン”な告解とは、ごく普通の聖堂の信徒席で、司祭と信徒が隣り合わせに座ってやるものだという。その場面を実際に目撃したことがあるそうだ。もちろん、信徒の告解内容も全部聞こえてきたそうな…… 「ついたて」があるところは、まだましなのかもしれない。なお、司祭と告白者を隔てる「格子の設置」は、16世紀のトリエント公会議で義務づけられたそうだ。
［6］は、那覇教区安里教会の現代型告解室。上にランプのあるドアから信徒が入る。内部は冷房完備なのだろう。
［7］以下の写真は再び長崎大司教区の教会に戻る。［8］は聖体拝領台の再利用といった感じ。注目すべきは、［9］の宝亀教会。美しい聖体拝領台と告解用のついたてが見事に合体している。
[10] は新潟教区鶴岡教会のもの。[11] からは、八木谷が2004年6月に訪れた欧州の教会の告解室になるが、この日本の鶴岡教会の意匠が基本的に西欧（フランス）のものであることがよくわかる。パリの聖堂にあってもまったく違和感のないデザインだ。
[12] はルーベンスの墓のある、ベルギー・アントワープの聖ヤコブ教会のもの。それ自体が美術品といっていいほど美しい形状だ。
[14] のガラス（強化プラスチック？）張りの部屋は、最初見た時驚いた。司祭（ご高齢で、顔を手で覆っていたのは、居眠りでもなさっていたのか？）がなかにいたのでこれは告解室？と思ったが、確信がなかった。それがやはり告解室とわかったのは、画像[15] のノートルダム大聖堂に行ってから。同じガラスのついたて、待機する信者たち、”CONFESSIONS DIALOGUE”というプレート（その下に司祭の名前と対応可能な言語名の表示あり）がかかっていたのである。また、[14]の司祭がかけているストラは紫、すなわちゆるしの秘跡用だから告解以外考えられない。[13] のようなボックス型の告解室はいろいろな教会でちらほら見たが、明らかにもう使用されていない、過去の遺物、といった印象のところが多かった（フランスの聖堂で物置のようになっている元祭壇――聖櫃も十字架も何もおいていない、からっぽの棚――にも強い印象を受けた）。
それにしても、古典的な（いかにも日本人のイメージする西欧の教会、という）建物の内部にある、ガラス張りの最新型告解室！ フランス人のセンスには脱帽である。
■ カトリック以外の告解室
[16] はきわめてめずらしい、聖公会の（！！！！！！）告解室。日本聖公会東京教区・清瀬聖母教会にあるもので、礼拝堂内部ではなく、隣の一室に保管されている。
［1］旧ザビエル聖堂（明治村） |
［2］カトリック神ノ島教会 |
［3］旧大明寺教会（明治村） |
［4］カトリック黒崎教会 |
［5］カトリック出津教会 |
［6］カトリック安里教会 |
［7］カトリック田平教会 |
［9］カトリック平戸教会 |
［9］カトリック宝亀教会 |
［10］カトリック鶴岡教会 |
［11］ウェストミンスター大聖堂 ロンドン、英国 |
［12］聖ヤコブ教会 アントワープ、ベルギー |
［13］サン・シュルピス教会、パリ、フランス |
［14］サン・シュルピス教会、パリ、フランス |
［15］ノートルダム大聖堂、パリ |
［16］日本聖公会 清瀬聖母教会 |
■ 告解／ゆるしの秘跡に関する参考文献
- 川村信三『二十一世紀キリスト教読本――福音は日本の土壌で実を結ぶ』教友社・2008
「第6章 安心｛あんじん｝――ゆるしの秘跡考」において、この秘跡の歴史や、司祭側・信徒側双方の対応や考え方について書かれている。とくに興味深いのは、イエズス会士がやっているゆるしの秘跡のための模擬訓練の様子。なお、「この秘跡を受けないからといって、信徒資格を剥奪されることはない」（p.94）とのこと。つまり、ゆるしの秘跡を受けなくてもカトリック信徒でいることは可能。
以下、図書館の目録から
- 横浜教区典礼委員会編『ゆるしの秘跡――そのすばらしさの再発見』女子パウロ会・2004
- 来住英俊『目からウロコゆるしの秘跡』女子パウロ会・2003
- ヨハネ・パウロ二世『神のいつくしみ――ゆるしの秘跡の執行に関する若干の側面 : 教皇ヨハネ・パウロ二世自発教令』カトリック中央協議会司教協議会事務部 訳・監修／カトリック中央協議会・2002
- ジャン・ドリュモー『告白と許し――告解の困難、13〜18世紀』福田素子 訳／言叢社・2000
- 山野内公司編、村岡マリ・イラスト『ゆるしの秘跡』ドン・ボスコ社・1999
- 藤田文子『ゆるしの秘跡――小・中学生の親・指導者のために』中央出版社・1979
- Ｗ・リュティ／トゥルナイゼン『説教・告解・聖餐』赤木善光訳／新教出版社（新教新書）・1997 ※初版1960年。著者たちはスイスの神学者・牧会者
- 日本コンキリウム編集局 編訳『コンキリウム叢書 7 信仰者の悩みと希望』南窓社・1973 ※Ch.デュコック「現実の和解と告解の秘跡」収録
- Ａ・レッチェル『告解の秘跡』Ｐ・シュネンベルゲル、横山喜之共訳／中央出版社・1964
| TOP |
■ 『別冊太陽 日本の教会をたずねて』リンク＆文献集 ■くりホン キリスト教教派の森 HOME
This page's URL: http://yagitani.na.coocan.jp/kurihon/taiyo06.htm